どうにもならない日

こんなはずじゃなかった2020年からの生きる記録

2021年1月1日〜1月5日

1/1

いつも通りの朝。家にある食べ物を掻き集めて、それぞれ違った朝ごはん。ひたすら賑やかなテレビをつけて無理やりお正月の雰囲気にするけど心が全く休まらない。引っ越しのことで常にざわついている。いつもなら張り切って行く初詣も、推しの神社までわざわざ行くような気になれない。これはコロナのせい。父親から電話。実家は有名な神社の近くで駐車場をやっていて、毎年三が日は参道の駐車場が使えなくなるために、少し脇道に逸れた実家が一番神社に近い駐車場として大繁盛するのだけど、今年は車が入ってこれないように閉めちゃった方がいいのか、参ったなぁと言うので、貯金箱みたいな箱に釣り銭無しで入れてもらうようにしたらどうかとアドバイスをした。

昼過ぎに子とふたりキックボードで散歩。近くの小さな神社の前を通る。普段から手を合わせる神社で、なんなら昨日も帰り道に一年を感謝した。でもここを初詣したことはない。元旦の昼間、意外な感じでまぁまぁの人が参拝に来ていて並んでいるから外から手を合わせて通り過ぎる。新しい家まで行ってみようかといってそのまま環七まで出て、表の階段から部屋の前まで上がってみる。そこからはじめて周りを見渡すと中野の大学がすごく近くに見えて驚いた。怖いから下に降りると子。三階だけど坂の途中の環七からすると五階くらいの感覚で、スケスケの柵から下を見るのは子供じゃなくても確かに少し怖い。降りてる途中でちょっと疲れちゃった、と子。これから毎日だからねと念を押す。環七をあがっていくルートで帰る。途中にある小さなやなぎ公園に寄り道。ブランコくらいしかやるものはないけど、この間の強風のせいか柳の枝がたくさん落ちていて、それをプラプラ手にしたりして遊ぶ。家を買いたいと言っていたあゆママから新年のLINE。鬼滅のキャラに新年の挨拶が乗っかった音声スタンプみたいなやつが来たけど再生はしていない。引っ越しどうなった?というメッセージに返信。元旦当日に連絡きたのがこのママというのがまた非日常らしくて良い。いい加減お腹が空いた。夫からもお昼どうする?という食べに行きたい気持ちが垣間見えるメッセージが来るものの、子はすき家が良い!絶対すき家じゃなきゃ嫌と言い、それに力なく賛同してようやく公園を出れる。夫にそれを伝えると返信がなくなった。空腹たまらず私も牛丼を買う。客人は他に二人。店員さんは一人か。誰も急いでいないけど店員さんは何かと動いている。お子さまセットにはクレヨンしんちゃんとラスカルの絵がついたおにぎりケースかカゴのランチボックス。すでにおままごとに使う計画をしているらしく、おにぎりケースを待ち構えている。持ち帰りながら開封。おにぎりケースに歓喜しながら家に駆け込んで早速そこにスライムを詰める。夫は私達がすき家と聞いて諦めてすでに家にあるもので昼ごはんにしていた。子と二人で牛丼を頬張る。元旦とは思えないような、これこそが元旦のような。誰かと引っ越しの話をしていた時に、天気が良いといいねと声をかけてもらったことを思い出して、正月頃ってなぜか必ず快晴だよなと自信たっぷりに天気予報をみてみると、嘘でしょ?なんと引っ越しの日に限って曇りのち雨予報。午後から70%とかで、その1日だけ。いや引っ越し屋は雨でも濡らさずにやれるとそれこそ自信満々できっぱり言われてるけど、こっちも行き来する予定だし雨は勘弁。憂鬱。これにかこつけて高円寺の気象神社に行こうと、具体的な意味を見いだせる初詣ができることには張り切ってしまう。夫が片付けついでに以前に買った気象神社の御守りを出してきた。ひとまずそれを手元に願う。

だらだらと元旦も夕方。昼ごはんの牛丼が重くて夕飯を食べる気になれない。今夜、子の好きな「それでは札をあげてください」のジョブチューンのスペシャルがコンビニ対決らしい。今日はもう食事はやめて、私達もコンビニスイーツ買ってきて、同じものが選ばれているか見ながら、夫が作った合格不合格の札でジャッジしようよ!と言って盛り上げる。そうなのだ、夫は引っ越しを控えたこの落ち着かない最中に、わざわざネットでその番組をあらためて確認してソックリに札を作っていた。本当にくだらないことに労力惜しまない。呆れながらも使い道を提案してあげてしまう私。子もいいねいいねと大盛り上がりで、番組がはじまる前に買い出しとセブンとファミマに急ぐ。園の近くの狭いセブンはいつ行ってもオーナーなんだかのおばさんがスイーツのあたりで品出ししていて見づらい。一品ずつ選んでレジへ。高校生のようなバイト君。セブンはなんかナナコに馴染めなくてお得に使えてる気にもなれなかったしあまり好まなかったけど、メルペイ支払いが出来ることを知ってから躊躇いなく行けるようになった。みんなでがっつり食べれるようにカサ増しにまいばすにも寄ろうと小走りしていると、道路の向こうからお友達のパパがひとりで自転車でやってきて、子と二人で明けましておめでとうと声をかけて手を振った。元旦のシンとした街で知ってる誰かと会うと妙にホッとする。最後にファミマに行くといつものお兄さん。締めの挨拶したばかりの昨日の今日が面白くて笑い合う。結局子はジョブチューンどころでもなくガツガツ食べて、いつもより少し早めに寝支度もできてすんなり就寝。夫が観ていた月曜から夜ふかしスペシャル、いつのまにか私だけでフェフ姉さんをはじめてじっくり観てしまった。目が離せなくなるほどフェフ姉さんがかっこよかった。

 

1/2

朝から子ども向けテレビ三昧でハイテンションの子。あと3日で引っ越すとはまだ思えない。物が片付いてきてむしろ生活しやすいくらい。子どもの遊び環境は丸ごとそのままだから勝手知ったまま遊べる。その間にまた少しずつ箱詰め。引っ越し料金を抑えるために全箱リサイクルもの。すでに書かれている品目に合わせて使おうと思っていたけど割と皆さん具体的。うちは「台所」とか「洗面まわり」とか、これまで置いてきた場所で書いていた。これが後々仇となることをこの時はまだ知らない。「ポパイ」「フィガロ」「昔のストリート」などと書かれた箱があってニヤニヤしてしまう。どんな人だったのか、それらをまた引き続き新居に運んだ誰かを思うと勇気が湧く。引っ越しは、無駄なものを目の当たりにさせられて荷造りに嘆いて、色々と諦めなきゃいけないものだと思い込んでた。なにも別に今すぐ選別しないでそのままの自分を引き継いでいったっていい。気が楽になって、あるがままを箱詰めする。持ち物の多すぎる夫に私が「これどうするの?」「本当に間に合うの?」とせっついても、大丈夫大丈夫と言い続けていたのは多分その発想だからで、ようやく動いたかと思うと物に埋もれに埋もれて長年触れてもなかった物も丸ごと箱に突っ込んでいる。しかしこれらを引っ越し先に収めるとなるとどうしたものか。今までは備え付けられていた収納棚に何も考えずに置けていたような物なんかも、棚がなければ全て床に溢れかえることになる。私はそんなことばかり気になって、思い立つ度にニトリのオンラインショップを眺める、を繰り返してたら、もう行ったほうが早いよ!と夫に一喝される。子は出掛けたくなさそうだったけど、とりあえず自転車なら分かってくれて高円寺まで自転車に乗る。気象神社に行きたい、というのはあまり皆の賛同を得られず、とりあえず行きがけにまた近くの神社を通り、今度は本殿の前まで行って参拝。帰りに時間あったら気象神社も寄ろうと簡単に予定して高円寺へ、堂々と駅前に駐輪。ついでに火事の跡を一応見に行く。年始の高円寺の街が寂しいことは知っている。そこに流れ着くまでの師走の活きた街は感じようと思っていたはずなのに、高円寺に来たのが5日ぶり。東京屋の浜さん、最後の挨拶することもできないまま12月が過ぎて、もう実家のある尾道に引っ越していってしまったことだろう。食料品の店で働く人すらも高円寺らしい!と思わせてくれる先駆けだった。この街に活気が戻っても、あの人達はもう帰らない。でもそんなことにもいつの間にか慣れていくのだと思う。この街の片隅で、全てを見届けるつもりで。火事の跡地は私達と同じく見物に立ち寄る人がいまだ絶えないようだった。カメラを構える人もいる。惨事が気になるというより高円寺の名物店でもある薔薇亭の最後になるかもしれないこの佇まいを確認しにきているみたい。この地に暮らす多くの人が、それぞれ何かを見届けようとしている。

駅に向かおうとすると子が勘づいて、電車に乗りたくないとグズりだす。不要不急の外出をしない方がよい今だから、本当はそれが安全なことなだけに複雑な気持ちになる。しかし夫がふざけるように抱きかかえてホームまで連れて行く。子ども大泣き。やっぱり、私はこうまでして外出しなくてよかったのにと思う。散々迷うことになっても送料がかかっても、ネットで買えばよかった。子どもに、広い公園にいくから電車乗るよ、すぐだよ、と言い聞かせて涙を拭いて、ほら外が街がみえる電車だよ、とずっとフォローの言葉をかけながら総武線に乗り込む。吉祥寺に着くころには少し落ち着いていたけど夫にはもう無表情で、好きなとこ見てきていいよと言い放って真っ直ぐ井の頭公園に向かう。夫が公園近くの古着屋に行きたがっていたことはわかっていた。公園に行くと子は本当だったと安心したのか一転して上機嫌。気を遣って遊具の方へ案内したけどそうでなくてもとにかく楽しそうにしていて、スワンボートに乗りたいとまで言う。お父さんが来てから話してみようと言って夫が来るのを待つと、機嫌良くしている子に夫も安心したのか、二つ返事でいいよいいよ!とボート乗り場へ向かう。はじめは気持ちいいね〜なんて言っていたけど、夫と交代で漕いだりもしていると段々酔ってきた。プカプカ浮いてるだけでいたいけど、往来するボートを避けるために結局少しずつ動くしかない。ここのボートに乗るのは二回目。前よりも大きくなった子がボートのなかで動こうものなら三人乗りは窮屈で少し怖い。我が子よりもう少し大きい女の子がお父さんと二人でボートに乗っていたりして、成長もすればスペースだったり経済的にだったりで、なんとなく三人でやれていたような娯楽もこれからは役割分担になるのかなと、そうしたら私はもうこのボートに乗ることは無いんだろうなとぼんやり思った。結局ほぼ定刻まで使って降りる。出たところの売店でディッピンドッツをねだられて、正月だから特別と夫が言ってベンチに座って食べる。あゆママと共通のママ友から息子の写真で新年の挨拶用に作られたLINEがくる。返信がてらに引っ越しを報告。このママ友の家は同じ通り沿いのうちから数百メートルの距離にあって、朝の送りや買い物の最中によく出会っては話す仲だった。家の周りのママ友達は、生活環境を共通点に付き合えていただけで、住まいがたった5分でも離れてしまうと、もう話す言葉もなくなってしまうのかもしれないなと寂しくなる。それにしても空腹がたまらない。ニトリどころではない。今日は吉祥寺に来たわけだし晩ご飯にスシローの手巻き寿司を買って帰ろうと話していたけど、むしろ中途半端なこんな時間だからちょっと腹を満たすためにむしろ寿司を今食べたい。家族皆それに賛成でスシローに向かう。PARCOにスシローとは、駅前だし便利で有難いんだけど、かつてのPARCOを思うと情けなくなるような、複雑な気持ち。そもそも吉祥寺PARCOはハードル低いものではあったけど、それでもスシローのあの看板がここにあるなんて見ちゃいけないものを見たような気にさせられる。かといって渋谷のPARCOのように舵を切られるよりは正直全然いい。PARCO自体随分と久しぶりに足を踏み入れたけど、エレベーターで脇目も振らずにスシローへ。受付前は混み合ってもいなくて、中途半端な時間だからかと思っていたけど中はそれなりに賑わっているように感じる。座って周りを見渡すと、郊外や地方はもちろん、都市型店舗でも、どこにいるのか分からなくなるくらい、お馴染みの光景なんだけど、吉祥寺はボックス席間のあの広々した通路が少し狭いような気はした。これからはこうして無理にでもスシローにしようという造りの店が増えるのかもしれない。しかしそれだけではない違和感。端末で注文したり、向かいにいる夫とコミュニケーションし辛くて気づく、店が異様に騒がしい。客が騒々しいのではなく、他所ではこんなのあったっけ?というくらいBGMが際立っていて、さらに何をきっかけにか大声で「ありがとうございまぁす」とかなんとか、昔のブックオフのように掛け声が繰り返される。なんかうるさいね、と夫も気付いていたようでお互い確認し、なんとなく口数が減る私達。黙っているから辺りの様子を伺いながら食事をしてるとオーダーミスなのか、いくつか周りのテーブルにいちいち店員さんがやって来て低姿勢で話しているのが目について、まだ開店して間もない中での正月で、思っていたより忙しくて大変なのかな、とか思ったりもした。軽く食べながらその場で手巻き寿司を注文、時間指定、ニトリの帰りにピックアップして帰る算段。少しユニクロも覗く。シルバニアファミリーオリジナルプリントができるらしい。夫が別フロアに行っている間、キッズフロアで待つことにするとプレイスペースがあったのでそこに入れさせる。私はシルバニアのプリントについて詳しく見に行く。この辺りでは吉祥寺店の限定らしい。可愛いかもしれないけど着るにはショボい気もする。なにより高い。そこまでの情熱はない。プレイスペースに戻ると、先にいた数人、家族だかお友達だかのグループの子達が迎えに来た大人達と帰っていくところだった。子は下りエスカレーターに乗る女の子と手を振り合っていて、私にお友達ができた、と言ってきた。幼稚園に行くようになって園のお友達という固定の友達ができたら、もう新たな出会いに期待することはないのではないかと、はじめの頃はそんなふうにも見えていたけどそんなこともなかったようで、ただ無作為に誰でも友達というのではなく、自分の波長となんとなく合うと思える子を選ぶようになったのかなと思う。続けて夫もやってきて、先ほどの女の子も履いていた色のスパッツを買って出る。ニトリでは何が必要かのイメージが出来てきただけで大した買い物もなく退散。手巻き寿司を取りに行く前に、気になっていたアパレルショップが目に入り駆け込む。秋終わりから子がドレスシューズを欲しがっていて、フリマや街で探していたけど良いものに出会えずしばらく放っていたけど、年末年始のセールの季節でまた思い出して、正月からZOZOを眺めながらいくつかドレスシューズやバレエシューズといった種類をピックアップしておいた。そのなかで子が気に入ったひとつがこのお店のもの。イメージできない類いの子どもの靴はやっぱり現物で合わせないと買いづらい。花の刺繍があしらわれたチャイナシューズで、素敵だけど子供にはちょっと実用的では無いのでは思うけど、現物をみたらサイズもちょうど良く子は今履いていきたい!というほどにやっぱり気に入っていた。終始相手をしてくれたのはスラリとしてマスクから上がガッキーのような顔立ちの店員さん。今夜は逃げ恥スペシャル。スペシャル放送を前にドラマの一挙放送をしていて、みくりが館山に行くのをやめるところで出てくる引っ越し屋がアート引っ越しセンター。うちの引っ越しがパンダのサカイじゃなくて子どもがなぜか不安そうだったけど、逃げ恥を見てようやくアートの引っ越しで納得していて私もホッとした。何が言いたいかって、つまりは今夜の逃げ恥だけはこの正月のちょっとした楽しみにしてる。こうして正月らしく気が緩む感じは嫌いじゃない。ソファーの前に絵本が並べられ子どものためのスペースが用意されているこの店の造りにも気を良くして、靴の他にセールになっているアウターも購入。ガッキーな店員さんが履いていたスニーカーを丁寧に袋に入れてくれて、物を買った時のこの流れはやっぱり快感。オンラインショップで確実なものを買うぶんには楽でいいけど、選びたいものだと実際手にして決められる方が安心感があるし、決めた時にはその場から喜べる。店を出て私だけスシローに手巻き寿司を取りに行く。持ち帰り用のロッカーに用意されていて勝手に取る。手巻き寿司セットの入ったビニール袋の下にスゴロクの台紙。ただのチラシかと置いていってしまうところだったけどしっかりピックアップ。食事時の時間になってさっきより受付周りも混雑していた。

家に帰って6時半。まだ空腹ってほどではないけど早速手巻き寿司を開ける。ん?何度確認しても手巻きする海苔がない。子どもが作りやすいようにシャリ玉仕様を頼んだから、寿司ネタセットみたいのがあったとしてそれと間違えたのか?ネットで注文内容を見てもこちらは間違いなくシャリ玉の手巻き。あいにく家では海苔を切らしている。この数日、引越しにむけて出来る限り食糧を使い込んだ。店に電話をしてみると騒がしくてよく聞こえない。バイトらしい電話口の人も対応に困ったのか折り返し電話するという。7時に店長から電話。すでに調べたらしく、海苔が入っていなかった可能性が確かにある、お届けしますときっぱりと言われて、こちらは言いづらいのだけど家は高円寺なんですと伝えると、あ…という雰囲気。でも車で今すぐ向かいますと、こちらとしては重要だけども、たかがと言ってしまえば海苔は海苔。しかも今夜は逃げ恥、とっとと食べてとっとと風呂に入れて早く子を寝かせたい、海苔なんて待っていられない。かといって手巻き出来る海苔を適量買えるわけじゃないし、引っ越しを控えた今、海苔をわざわざ買って今夜のためだけに開封するなんて、せっかくここまでで使い切ったのにガックリすぎる。それなら返金するというけど、これも引っ越しを控えた今受け取りの日程の擦り合わせが厄介。結局今から返金を、海苔代200円程度を、車で届けにくるとのこと。たかが海苔の存在でこんなにも右往左往するなんて後にも先にも人生で二度とないと思う。こうなると唯一の救いがシャリ玉だったこと。子が器用に寿司屋さんごっこにしてくれてよかった。スゴロクは忘れられずにあるのになぜ海苔がないのか、工程が良くないのではと夫はいうけど、そんな流れがあったって、これはもうただのうっかりでしかないのでは。あの店うるさすぎて、そりゃあ集中力もなくなるよなとも思う。もうすぐ食べ終わるという頃にチャイムがなって、安田大サーカスの団長みたいな店長がやってきた。茶封筒に入れられた216円。子もパタパタとやって来て「もう食べ終わっちゃったよ」と無邪気にいい具合のアシストをしてくれる。すると店長もすかさずこれがタイミングと言わんばかりに、これは店からのお年玉代わりということで、といってスシローのケーキを差し出してきた。やってくるからにはさすがに海苔代金だけとはいかなかったのか。ちゃっかり受け取りながらも黙っていられず、皆さんちょっと掛け声とか意識しすぎて作業に集中できないんじゃないかと提言。決してクレームではなく世直しのつもりで言ってるんだけど、団長は、謝罪します!というような姿勢で、しきりにごもっともです、と言ってる。謝らなくていいから、少しでもこれから負担なく働きやすい環境になってくれればいい。チョコレートケーキとミルクレープ、3個ずつで計6個、ご丁寧に1個ずつプラ容器に入ってるからかさばる、かさばる。夫はどうする?やまちゃんにあげるか、と言っていたけど、無駄にはみ出すことのない形の整ったスシローのケーキ、容器はきれいなままだから子のおままごとに使えるし、引っ越しまでの朝ごはんにでも食べきれそうだなということでそのまま冷蔵庫へ。

そもそも放送時間に観ることは諦めていたけど、子が起きてる間に逃げ恥が始まってしまう。夫が気遣ってお風呂は自分が入れると言って、久しぶりだから子は喜んでお風呂へ行ったけど、中途半端に観る気もせずむしろテレビを消した。

 

1/3

今日も子ども番組が特別。おかあさんといっしょの映画がやったり。子の機嫌が良い。MXでシルバニアファミリーの一挙放送が始まる前に図書館の返却ポストへ絵本を返しにいこうとキックボードで外へ出る。遊びながら進んで遅くなってしまった。もうシルバニア始まっちゃうから急げ急げと、結局キックボードを抱えて走っていると、夫から今どこ?と連絡。朝から出ていたけど鍵を持っていなかったらしい。マンション前に着いて夫も合流して上にあがる。いま待ってる間に猫おばさんに会ったから挨拶しといたよと夫。同じフロアのよく話してくれる人で、毎朝のようにエレベーターが一緒だったのになぜか最近会えていなくて引っ越しを伝えられずに気になっていた。ご丁寧にどうも、と言っていたとのこと。仕事も介護もあるし、そう遠くには行けないと話していたらしい。私達と同世代の子をここで子育てしてきた人達。思い出は私なんかと比じゃないはず。そんな皆んなの行方も知れずに先に離れるのが本当に寂しい。

子がテレビやら集中している間にひたすら棚などを検索していたけど、今使っているニトリのシェルフの数を増やすことに決まり。数年前に買った時から改正されたらしく配送料が高すぎるから夫が在庫のある渋谷まで買いに行くといって出て行った。私達はせめて中野のリサイクル屋なんかを回って何かないか見に行くという約束をした。

夫の物以外の梱包はほぼほぼ完了。夕方4時頃、お父さんに頼まれてるんだよと言いきかせてどうにか家を出る。マンションの下で同じく数日後に引っ越す家族のママに出会う。エアコンの移設の話や業者の話。一週間近く遅いとはいえ同時期に引っ越す人がいることが心強い。うちはあと2日。

リサイクル屋の前に停めた自転車で子を待たせ自分だけで中を一周するけど収穫なし。どちらかというとおしゃれなリサイクル屋でそもそもそんなに期待は出来ないけど、たまに無印のポリの収納ケースやお買い得なメーカーなんかもある。店の奥の方まで行った時に窓から少し遊具のある小さな公園が横にあるのが見えた。店を出て、せっかく外にきたから公園行こうかと言うと、出るのを億劫そうにしていたとは思えないくらい前のめりで張り切る。このまま真っ直ぐに公園があるのは分かっているけど、脇道の細い路地を回ってさっき見えた公園を探してみる。辿り着いたらゴミが不法投棄されているような切ない公園、というよりちょっとした広場のようないで立ちだったけど、初めてみる形のシーソーがあった。昭和の遺産という感じではなく、いまの遊具シリーズとしてよく見るテイストだから、わりと現代に設置したものなんだろうけど、珍しい。子育てするようになって気づいたけど最近の公園には滅多にシーソーがない。私の子供時代は色んなシーソーがあって、なんなら一番好きな遊具だったし、小学校にもあったような覚えがあるけど、シーソーは危険ということになったのだったか、とんと見かけない。珍しいねと言いながら跨いでみるけど、私と子ではたいして盛り上がらず。ひとりで乗れるパンダのスプリング遊具の方で何度か揺れて退散。無邪気に子どもが立ち寄れるような風貌ではない異様さと哀愁のある公園だった。また表通りに出てメジャーな公園へ。こちらには子どもがいた。それぞれが相手の動きを若干意識してるかのような、うまい具合にかち合わないように遊具を使っている。ここも一時閉鎖されてたと思ったら新しい遊具になっていて、一見どうやって遊ぶのか謎の形の遊具だけど、子ども達は当然のように手足をかけて遊べている。まぁ、ただの縁石も子ども達にしてみれば遊び道具の一部になるくらいだし。薄暗くなってきた頃の公園はなんか寂しくて苦手。お母さんと娘とか、お父さんとヨチヨチの子とか、周りに同じような状況の人が何組かいるこてでまだ救われる。天気予報をみて5日が曇り予報に変わっていることを知ったのは確かこのタイミングだったと思う。よかった、本当によかった。気分が少しだけ晴れて、張り切って子に声をかけて夕飯を買いに行こうとヨーカドーへ。めぼしい惣菜などは無く、冷凍食品なら買っても大丈夫かなと選んでいると子がカツサンドが食べたいと言い出してしつこい。ヨーカドーはさっさと済ませてピーコックにも行ってみる。ここにもカツサンドは無し。手を尽くしたのは分かってくれたようで、中華惣菜コーナーの値下げ品なんかで適当に夕飯を買う。私はあんまり食欲もなく体調が良くない。月のもののはじまり。

 

1/4

テレビが日常に戻った。以前は5日くらいまで正月気分でいられたような気もするけど月曜日という区切りでもあるから早まっているのか。今日こそはおもちゃを全部詰めなきゃならない。残りのおもちゃのための箱は確保してある。3枚だけ貰えた新品のミニオンズの箱はもう残り1枚。午前中にみーちゃんのママから、明日明後日よければ子を預かるよとLINE。みーちゃんは二学期の最後に突然風邪で休んでしまったし、子はずっとみーちゃんと遊びたがっていたから私も最高に嬉しい申し出。どうせなら、と思い切って今日は無理?と聞いてみる。明日は当日だからむしろ子も一緒に行動させたい。今日おもちゃを仕舞う場面にいるのが辛い。それを伝えると引っ越し日勘違いしてた、今日も全然オッケーだよと快く引き受けてくれた。もうすぐお昼になってしまうし午後1時に公園の駅入り口側で待ち合わせ。子はもう嬉しくて仕方ない。何を持っていこうかとおもちゃ選びに夢中で、それ以外の物を荷造りしようが気にしない。興奮し過ぎていてお昼ごはんも食べないと言う。みーちゃんも今頃お昼ごはん食べてるから、同じように遊べて同じようにおやつにできるように食べてというと、勢いよく少しは食べた。中途半端になるくらいなら我慢しようと未開封のままここまできた冷凍焼きおにぎりがあるから、一応それを持たせることにする。同じように手をつけていないコアラのマーチなんかのお菓子もある。それとみーちゃんに気持ちばかりの小銭のお年玉。みーちゃんのママとパパは二人とも福岡の出身で、秋頃からずっと年末年始の帰省にやきもきしてきて、結局泣く泣く飛行機のチケットをキャンセルする羽目になってしまった、そんなご時世。たまには違う人からお年玉を受け取るイベントもいいだろう。子には園に行くのと同じようにタオルハンカチ、コップ、水筒も持たせてキックボードで公園に向かう。一歩外に出たら世間も途端に日常になっていた。ひたすら荷物をまとめるだけの今日の私の情けない姿に対して、待ち合わせたみーちゃんのママは心なしかお休みモードらしいメイクで、休みを謳歌できていない自分が悲しくなる。出会うなり子ども達はなにやら話し合いをはじめ、もう私と別れることなど気にしてない。みーちゃんのママは、まずは公園でキックボードで少し遊んだら家でおやつ食べて遊ぶ計画だと話してくれて、私は持ってきた食べ物を渡して頭を下げて急いで帰る。やはり子どもがいないと作業が捗る。今日から仕事はじめの引っ越し業者とエアコン移設業者と、年末から引き続きの話し合い。今の家はもう取り壊しなんだし、不要なものは何でもかんでも置いていける、と勝手に思っていたわけだけど、結果取り壊しでなくリフォームということで、やっぱり本来通りに処分に費用がかかるものは残せない。エアコンとか、残してもいいけどお金は取られる。それなら転居先のエアコンのひとつが古いものだったから交換することにした。引っ越し業者に移設も頼めるけど作業は提携する別業者が行うもので、問い合わせると料金は確定じゃないと言われる。その流れについて検索すると悪い口コミが出てくる出てくる。引っ越し業者から聞いていた費用とは別に現場で他にこれがかかる、あれがかかると言われたというもの。それを踏まえて何度も料金確認。だいたい今の家では、エアコン取り付けたものの猛暑の去年の夏以外あんまり使うことはなかった。だからそんな劣化してるとは思えない。通常の作業費以上にかかるものはないはずと自分を納得させる。仕事の確認メールも処理。取材相手が確かな人だと事務局の処理も早くて、いいことなんだけどモヤモヤする。力関係があからさま。仕方ないのかな。みーちゃんのママは新たな行動に移る度に報告をいれてくれて、3時前に家に移動、おやつ、なごやかに遊んでる、と3時半。4時にはまた駅前で落ち合う予定でいたら、みーちゃんがまだ遊びたくて見送りしたくない!とのことで家まで迎えに行くことに。人のお家で遊ぶことが楽しくて楽しくて帰りたくないと駄々をこねるのではないかとハラハラしていたけれど、逆にみーちゃんがそう思ってくれたというなら良かった。ピンポンをした途端に子ども達の声が、ドア越しじゃなくてここにいるかのような生声で響いてきて驚いたけど、案外みんなこんな感じのところに住んでるものなんだなってちょっとホッとしちゃう。子は自分で荷物をまとめて出てきた。みーちゃんは少しつまらなそうにどうにかバイバイしてくれた。子はキックボードに乗りながら帰る。横断歩道を渡る前でいつもの引っ越しママに会う。うちはいよいよ明日。近いからまた会えるよと言ってくれる。そんな気もするし、私がこっちにはあんまり来なくなるかもしれないとも思う。帰って子はおもちゃが全部箱に入っていて最初はショックをうけていたけど今日の楽しかった出来事でなんとか支えられる。持って出ていた物も整理して仕舞った。夕飯はポイントを使いたいから、すぐの時間でも予約して近くのパスタ屋に。Gotoイートとはなんだったのか。その使い方なんかを情報番組で紹介しているような頃はまだ平和だったんだな、なんて思ってしまう。夫はまだ荷物に埋れていて、適当に食べるからいいというので子と二人で向かう。まだ早い時間だから誰もいない。はじめに座った場所は暖房が直撃でパサパサになるから料理が来る前に移動。でもその並びはどこも当たりが強かった。でももう他の客人がやってきて動けない。その客人はあとから小さな子連れのファミリーがやってくるグループだった。若い妻はやたら大声で話すし、おばあちゃんと思しき中年おばさんはメニューで口元をカバーしながらくしゃみをして、本人もハッとしたようにこちらの様子を伺い気まずそうにしていた。もしその人が感染者だったら、そのメニューを通じて誰かに感染っていくのは明らか。この大声で話す人がいる環境もすでに不愉快。やっぱりまだ私は人と食事ができそうにない。明日の引っ越しも、人がやってくることに不安があったりする。怖いけど、誰にやれと言われたわけでもなくぶち当たってしまうこの不安は、どこにぶつけようもない。とにかく生き延びるしかない。

 

1/5

何が起きた一日だったのか。今日の予定は紙に書いて貼ってあった。8時半引っ越し開始、同時にエアコン移設、午前中に新居に新しい冷蔵庫納品、午後1時から3時元の家で冷蔵庫引き取り、3時から5時ガス終了の立ち合い、夕方頃に新居でガス開栓の立ち合い。我ながらうまい具合に調整できたと思う。

まだ梱包しきれていない夫に代わって朝8時過ぎにATMに現金をおろしに行く。マンションに戻るとエントランスにアートの服装をした青年。うちが引っ越しですと伝えると、現地集合スタッフだから先に着いてしまってすみません、後で向かいますと元気に挨拶してくれた。気持ちの良い若者なんだけど、引っ越し予約する時に人と接触することの不安を訴えたら、まず事務所で皆んなの検温、健康チェックをしてからなのでご安心くださいといわれたのはなんだったのか。しばらくしてアートの人が3名家にやってきてあれよあれよと移動が始まる。さっきの若者は結局車番なのか室内までは来ていなかった。いま私達がいる主要の部屋以外の物をどんどん運ぶために、子には落ち着くまでずっとテレビを観せておく。一回目の移動。まだ周りの環境が見えていない場所へ、ドタバタとさせながら行くのが不安で、はじめは夫に行ってほしい。冷蔵庫の納品もあるし、夫がドラッグストアでアートの皆さんへリポビタンDを買いながら新居へ、私達は少し荷物を手持ちして後から向かう。そしたらまた夫は荷物をまとめに元の家へ。引っ越しチームに荷物を入れてもらいながら今度は私がエアコン移設に立ち合い。取り外しの時は一人かと思ったけど、取付にはもう一人がいて今度はその人がせっせと動いている。まず領収書を差し出して、管が使えないだとかで1万5千円ほど追加になるとサラリという。これが例の。聞いても分からないなりに何故だか聞き出して、その長さいるか?とかあれこれ口出し。たいして使ってなかったのに?と言うと、でも何かあった時こそお金がかかってしまうと脅される。ネットで散々見た事例でも、いざ自分の番になるとやっぱり自信がなくて渋々了承してしまう。少しもまからないのかごねていたら1万五千以下は切ってくれた。作業に入ってからもずっと、これは2015年製のだけど本当に使ってなくて、ここ2年くらいの夏だけだったから、また使うか分からないし、それなら古いままでいいんじゃないのかとも思うんですけど、と声をかけ続けていたら作業員のお兄さん達は苦笑い。なぜだか元の費用はアートに支払いで、この追加は彼らにだから、これが彼らの日当になるのかと思えば仕方ない気もしてる。さばさばしてなくて、向き合っておっとり話してくる優しい感じの人で、それだけでペースにのまれてしまいそうな、こういう人にのまれる幸せを求めてしまいそうな、そんなことを考えてしまうくらい、とにかく、今の私は心細い。磁場が悪いとずっと思っていただけにこの家にはまだ不安しかない。一人が作業している時にベランダから真っ直ぐ景色を眺めているマイペースなこのお兄さんに心を乱されるのもそういうことなのか。元からあるもう一台のエアコンの管が通った穴の埋めが汚いことに気がついて、ついでにこっちもやり直してほしいと言ってみると、やっぱりその人は適当に優しくて、一度終わったパテを黙って取りにいってまでさらりとやってくれた。

終わってまた前のマンションに戻る。高円寺方面の友人、ひとつ下の男の子とパパが自転車でマンションの前を通ったから、今日引っ越しでもっと家が近くなりますと伝える。そちらは今から新宿中央公園に行くという。そこの家族は週末には大体、父子二人でお出掛けするところと、ママがひとり商店街で買い物するところに出会う。月金で勤めているとそうして分担しやすいのだろうけど、夫のようにフリーで働き常に作業に追われていると、毎日毎日何かしらやっていることになって、子と二人で遊んでもらうという切り替えの時間なんて滅多にない。それも今となってはもうどうでもいいかもしれない。こうして一日のことを振り返る時間すら保てないでいることは辛いけど、そこは自分が睡眠を削って乗り切るしかない。でも子どものペースで生きているとそれだけで疲労感。ともかく、そんな子どもの面倒をみる人として対等に話せるパパを見送ったタイミングで、同じ園で近所の親子とも遭遇。最後の最後のこんな日まで、家に出入りするだけで誰かに会えるそんな場所だった。

二回目の移動を終えた新居で今からお昼休憩にさせてもらって一時間後に前の家に行きますとのこと。休憩を挟んでやらなきゃならないほどの物量ということなんだろうな。私達も子どもに何か食べさせるのと冷蔵庫の引取りのために元の家に移動。何も無くなって埃っぽくても、まだこっちの方が落ち着く。ファミマの店員さんでいつものお兄さんじゃない日本人の男の人が、「もう引っ越し落ち着かれましたか?」と聞いてくれた。いつも近くで聞こえてくる話を把握してくれていたらしい。店を出るとコージ君に出会う。夫は日にちまでは連絡していなかったようだけど、粗大ゴミとして廃棄する夫の古い演奏道具がエントランスにあるのをみて、あぁもうすぐなんだなと分かっていたらしい。コージ君は次に引っ越すならもう下階を気にしなくていい家じゃないとダメだと決心していた。この建物の完全退去までにはあと9ヶ月もある。どう世の中が変わるのか。変わらないかもしれないし、私達は変えたくないこともある。ちょうど冷蔵庫の引取りの人達が来て部屋にあがる。滞りなく終了。ピザまんを食べ終えて、引っ越し作業員の方がやってきたと思ったら、午前で終えたらしい部隊を応援に呼んだのか人が増えてる。それだけ手こずるうちの荷物。最後の荷物が出たのは2時半。精算をして夫の待機している新居へ送り出した直後にガス終了の精算がきてタイミングがばっちり。新居に移動、荷物が入った。リサイクル箱に書いた中身がざっくり過ぎるのと配置計画が甘かったために上手いこと振り分けができない。今度は部屋内の作業まですることになった朝の若いスタッフに「カメどうします?」と聞かれて「カ、カメ?」と振り返ると、本当にカメとしか書かれていないリサイクル箱。だから入れたものを書いた方がいいと夫に言ったのに。書いた自分も表記が甘かったけど。カメじゃないんで、その辺で大丈夫ですと伝える。そんなこんなで夕方になる前にようやく引っ越し完了。前の家へ戻り、トイレにかくまっておいた猫を出して夫が新居へ連れて行き、私と子で管理人さんに退去完了の報告。さっきまで住んでいた自分の物を置いていたこの部屋、管理人さんは土足でいいですと、外履きの靴のままズカズカあがっていき、自分もそうするんだけど少し胸がぎゅっとなる。残置はだめだけど状態のチェックらしいことはなく思った以上に緩い。ただ指定されていた場所とは違う部屋に付け替えたエアコンの跡を気にされた。いや、それは管理人の吉田さんに相談したら出入りの工事のおじさんができるってことでやってもらったんですよと話す。あの工事の人がここに付けて良いって、と言うと、そうか私は覚えなかったけど、そうだったかもですね、でもあの人もう亡くなっちゃったから、コロナで。とのことで驚き。いつですか?!だってこの辺で歩いてるの見かけたのに、と言ったら、はじめの頃のコロナ感染でらしい。よく見るなぁと思っていたのももう約一年前のことなのか。あぁ。あんなじいさんが。あの混乱していた頃に不運にも感染してしまったのか。何をしたっていうんだろう。辛い話。ゴミは収集日に合わせて後日出しにくることも許可してもらえた。何よりこのご時世というのと年末年始で粗大ゴミの予約も随分先になっている。通常のゴミも、年明けの回収がはじまってまだ一週目だから出せない物もある。普段だと透明の袋から透けてみえるゴミで、どこか引っ越しなのかなと判別されかねないこともあるけど、このゴミ収集場が山盛りになるタイミングでよかったといえばよかった。ひとまずお世話になりました、また来ますと言って新居へ。ちょうどよくガス開栓の立ち合いの人が来た。わりと長い時間見ていき問題は無いとのこと。さて、最上階だから上はないけど、真下と隣りのおばさんには挨拶にいかないといけない。はじめに引っ越し屋さんが下階には声かけて了承得ましたとのことだったから、このまま黙って住むわけにはいかない。私は何日も前から何を買おうか考えていたけど、二転三転してラップにしようと思った。だけど「のし」を付けなきゃと思い込んでどうしたものか先延ばしになっての当日。夫は実際面と向かって話すんだからのしは要らないでしょ、と言って今度は夫がドラッグストアに出て行った。なにより今は猫が気がかりで誰かしら家にいて様子を見ていないといけない。前の引っ越しもそうだった。おとなしく越してきたと思ったらなぜか新居の共用廊下に向かってアオンアォンと鳴き続けた。ここから出してくれということだったのか。でもあの時はその日限り。居場所は定まらないなりに鳴き続けることはしないでくれた。幸い今回は移動してきてから一切鳴かない。季節もあるのだろうか、まずは敷いたカーペットの上から動かない。夫はうちが普段使うよりもずっと良いクリネックスの箱ティッシュを2パック買ってきた。まずはすでに顔見知っている隣りの部屋から。夜6時。おばあさんは出てくるなり、だから挨拶なんていいって言ったじゃない、そんなの誰もしないよ?と言って頑としてティッシュを受け取らない。いやいやそうはいっても始めなので、とこちらも引かないでみせると、そんなのいいのよ、あとでアダになることもあるから、そんなにしなくていいのよ!と恐ろしいことを言ってくる。物を渡す渡さないの押し問答でアダになることとは。だったらそっちこそ黙って受けとりゃいいのに。怖い。やっぱりこの婆さんは要注意かもしれない。一度部屋に入り、一応違うパックに持ち替えて今度は下階に。表にピンクの自転車を停めているから小さい女の子がいることは分かっている。気さくそうなお母さんが軽い感じで出てきて安心する。お子さんは、と言うと5歳です、とのことでずばり同じ歳。下に関しては安心要素しかない。全てのミッションが完了し、どっと力が抜けた。とはいえ、猫がまだ気がかり、外に食べに行くかという気にはとてもなれない。だいたい店が周りにないから不安になる。そこにピンポンされてドキっとする。チャイムの音もカコンカコンと古臭くて慣れない。さっそく隣りのおばあさん。逆にアレなんだけどこれ食べない?と、蕎麦の乾麺を何種類か持ってきた。「あぁ食べます、もう荷物もめちゃくちゃなままだし本当に困ってました、助かります」と、もうこの人に逆らうのが怖いから全てを流れにのって受け入れる。ただのお節介ばばあだから、うちじゃ食べきれないから、と笑いながら言って帰っていった。本当は人と関わるだけで憔悴しちゃう。でも食べる物がないのも本当。私は食べる気力も湧かない。夫が引っ越し蕎麦だ、と言いながら茹でる。そうして夫が、おや?ということに気がついた。水が弱い。量が出ていない。私はいまいちピンとこなくて、そうかな、このタイプの蛇口だからじゃない?とか呑気なことを言っていた。そんなわけないだろうと思ったから。ところが夜のお風呂になってさすがに気がついた。48度にしても湯加減はいまいちで、ずっと流し続けなければやってられない。シャワーは弱々しく、湯船から手桶で流さなければ髪の毛一本も流れていかない。疲れてもいるし緊張感もあるし、まだ寝床すらままならない状況というのに、この仕打ち。もう参ってしまった。引っ越した日の夜の寂しさは何度経験しても変わらない。慣れない場所に布団を敷いて、カーテンもなく、隣りのマンションの常夜灯が眩しいなかでどうにか寝りについた。