どうにもならない日

こんなはずじゃなかった2020年からの生きる記録

2021年9月27日〜9月30日

9/27

園送りの後、珍しく元夫が私の前で朝ごはんを食べているから小学校の話をする。前のマンションで仲良くなった同学年の子の母が学校を迷っていると昨日連絡をくれた。というのも最近その子が敏感症になっているとのことで、どうケアをしたらいいものかと困っていて、これまでは学区外の学校の方が近いから越境することだけ考えていたけど、うちと同じ小規模校も視野に入れ出したという話。元夫は、スポーツをして頭も身体も疲れさせてしまうと変わるかもしれないと答えてきた。きちんと悩みや相談が含まれる話にはふーんというだけでは終わらない元夫だけど、そういえばあらゆる話に感情の受け答えはないから、こうしてテーマがないと会話にならないんだなと思う。正直付き合いが難しいから自分のために今のように距離をとれてこれでよかったのかなと思う場面はよくある。かといって、他の誰かに替えがきくわけでもないから私が話を向ける先がない苦しさは変わらない。

今日はサンリオ展に行くから公園で遊べないということは言っていて、予想通り子も楽しみにしているから遊べないことに納得していた。まっすぐ帰ってトーストの昼ごはん。元夫が自宅作業をするなか私達は家を出る。久しぶりに子どもと地下鉄。ヒルズ直結の駅で外に出ると、子どももいつもと違う都会を感じて、こういうの久しぶりだねと言って興奮していた。バレンシアガと書かれたTシャツを着る人が歩いていて六本木だなぁと思う。サンリオ展は小規模ながら内容が充実していて嬉しくなる。80年代に生まれたコミカルな絵のキャラクターは漫才ブームの影響もあったと書かれていて、サンリオでなくても世にファンシーなイラストで溢れていたことも説明されていたり、マロンクリームも当時流行していたオリーブ少女を意識して生まれたとか、いま知るからこそ楽しい情報が満載。なかでも、「カワイイ」以前、サンリオは「メルヘン」と呼んでいたという主張が最高だと思った。図録を買う。いずれ欲しいと思った時にもサンリオのものは値崩れしないことが分かったから今のうちに。グッズはこれというものはないけど何か買わないと気がすまない子が、いちご新聞デザインのマグネット付スタンドフレームを買う。どのデザインが出るかわからない仕様だけどそれを欲しがり、ポチャッコ表紙デザインのものが出てそれなりに喜ぶ。私は確実なものが欲しい子どもだったから我が子の勝負師っぷりが怖くもなる。外を少し散歩。ひたすら子がお出かけを楽しんでくれてよかった。スイーツ食べたりティータイムもしたがっていたけど、さすがにこんなところでそこまではさすがに無理。外のベンチで持参した飴を舐めたりして六本木をあとにする。そのままプラザに遊びに行くかと思っているとちょうどママ友からも連絡がはいって、タイミングいいのに子は今日は家で遊びたいとのこと。家族がこんな状況になってから元夫が作業をしているなか家にいるのは苦痛でもある。まだ仕事をしているかと連絡を入れると、あちらもそう思っているのか、もうすぐ終わるとのこと。今日は家で遊ぶとのことだからと断りを入れて家に帰る。途中のバス停に一学期で園をやめて引っ越ししたお友達の姿が。今日は遊びに来ていたとのこと。さなえちゃん痩せた?!と驚き続けていて、もう普通に食べれていると思っていたけど久しぶりに会うと違いは明らからしかった。

私が仕事を探している今、所属している区の仕事の事務局でも雑務のアルバイトを募集しだして、せっかくだから応募していた。これで決まれば話が早いと少し期待していたけれど、応募は多かったらしく一番家が近い人にしました、との返信があり。阿佐ヶ谷まで通うってどうなのかなと迷いがありつつだったけどダメとなるとやっぱりがっかり。

夜ゴミ捨てついでの散歩。この時間を子が意外と楽しみにしているけど季節的にいつまでこうしてゴミ捨てできることか。わざわざ上着を着て出なきゃいけなくなったら、子には一人で待てるようになってもらわなくてはと思う。

 

 

 

9/28

登園後、委員会の委員長と二人で作業。彼女とは未就園児の頃からの付き合いで同じ幼稚園になり仕事の紹介もしてもらったし、小学校も一緒になる。これはこの先も付き合いが長くなるだろうと離婚のことを話す。いつも豪快なタイプのこの人が弱々しくなって明らかにショックを受けていて、話を聞いてくれながらうっすら涙ぐんでいるのがわかった。こうして皆んなが泣いてくれるだけ私は気丈に振る舞える。ありがたかった。秘密を共有させてしまって、苦しくなったらあの私の仲良しママが知ってることだからあの人に吐き出してねと言って私は笑い話にしておいた。それでも彼女はしんみりとしたまま、困るようなことがあったらなんでも言ってと添えてくれた。

帰って久しぶりにコーヒーメーカーでコーヒーを飲んでみる。この前新しいスチールラックにセッティングした時に中を開けたらフィルターだとかポットだとがカビていて驚愕した。家庭のなかのゴタゴタでコーヒーを淹れる余裕なんてもないひと夏だったのだ。それらの清掃も終わり久しぶりに淹れたコーヒーは苦くて驚いた。

お迎えの後いつもの公園。みーちゃんは風邪を引いて休んだあとの病み上がりだから帰っていって、わりと珍しい組み合わせで薄暗くなる5時までよく遊んだ。一人は幼稚園児の頃を私達も知っている小学生の兄弟がいるから、親は就学についてを熱心に話し込んだ。小学生になると周りが見えるようになってきて段々と自分とその他の距離感を使い分けられるようになるということ。例えば今は見境なくそこにいる人間同士でワーっと遊べているのが、自分はこっちのチームだからそっちとは連めない、といった棲み分けをする。私はぼんやり家庭内に当てはめて考えてみた。今は子がお父さんをそのまま受け入れているけど、そのうち何か違うと気がついて距離をとったり、それが捻くれた方向に影響したりするのかなと思うと暗い気持ちになる。ただでさえ成長が見えないところにイレギュラーな試練が常に傍らにあっていちいち辛い。

帰ってからのおやつに水色の綿あめを食べて口を真っ青にしていたから写真を撮って元夫に送る。彼は帰るとその情報を頼りに子とコミュニケーションをとる。寝る前、子の方からお父さんにおやすみのキスをしたらしく私のところへ来て、お父さんもうすぐいなくなるから、してあげてもいいかなぁと思ってチューした、と言ってきた。子どもが大人の都合を分かって認めて前向きなことに驚く。離婚だ別居だと話にならないほどに揉めていた頃は、これから自分が幼稚園で工作作ってきてもお父さんに見せられないのかと泣いた子。年長の一学期まで、お父さーん!と、家にいてもいなくてもまずお父さんと呼びながら帰って来ていたことがもはや懐かしい。殺伐とした家庭のひと夏が過ぎて、期待することは自然となくなったのか、今は居ても呼びかけもしないし寝ている元夫のことを朝出る時になってチラリと横目で見るだけで起こすこともない。以前のようにお父さんに教えよう見せようという言葉は減り、居ないものとして過ごせている気がする。それは辛く悲しいことだけど現実に順応しているわけで、それなのに私は、そんな子どもをいつまでも盾にして受け入れようとしていない。

今シーズン観ていたドラマは皮肉にも「家族募集します」最終話をティーバーで観る。後半でみんなの家にやってきた小学生の女の子とお父さん。はじめはうまくいってなかった二人の関係がみんなの家を通して変わっていき、さらには元妻と三人で顔を合わせる時間にも変化があって、そこに子と元夫を重ねて涙が止まらない。こうしてやり直しがあるわけでなくてもかつての家族をお互いあたたかい目でみる日が私達にもくるのだろうか。そんな日がくるのは良いことなんだろうけど、関係を清算していることを認めているからこそだと思うと寂しいことでしかない。

 

 

 

9/29

朝の送りから今日は求職支援の面会に荻窪へ。条件に合うのがなかなか無いのよごめんなさいね、と例の自身もシングルマザーの担当の方が言ってくれたけど、そりゃそうだと思う。やっぱりパートタイムはハローワークより民間の求人サイトの方が職種は片寄っているけどあるにはある。とにかく今はコロナの影響で求人がグッと減っている時期で、これから徐々に増えていくと思うけど、学童を狙うためにとりあえず何か就労したいのであれば店先の貼り紙が一番よねという話に。ここには今こんな感じしかないのよ、とスシローと餃子の王将の求人票を出してはくれた。とりあえず今履歴書を出してあるところの様子をみながら次は10月の中頃に話し合いましょうということで終了。自分のことなのに、こんなに人の手を借りながら職探しをすることって意味あるのかなと思っていたけど心の支えにはなる。何かアクションをしたタイミングでマサコさんからも連絡が入ることも以前からよくある不思議。気にかけてくれる人がいる有り難み。少し気分が軽くなって今日は気候も良いし、ついでにタウンセブンも寄って行くことにした。キャンドゥやらミカヅキモモコやら、一人というだけで集中して見られるから判断も早くさっさと買っていく。リニューアルした西友部分もエスカレーターからこんなものかと眺めて、これといった目的もなく西松屋へ。ロンTやボトムス、あれば使えるものはあるけどいまいち手が伸びず。ガールズの冬ものワンピースはなかなか使えそうと思いながら大量の服をかき分けてみていると子が好きそうなワンピースを発見。少しハイネックのリブ素材長袖の切り返しにシフォンスカートはブルーから紫のグラデーションに細かな星が散りばめられている。一枚でキキララみたいな服。これはもう絶対に子が目を輝かせる服だし、もうワンサイズ大きければ私としても買うことも現実的。店員さんに聞いてみるとデータ上は希望のサイズが一着あることになっているけど、ただ一着というのはズレもあって絶対とは言えなくてと申し訳なさそうに言いながら一緒に探してくれる。しばらく山をかき分けて、私も半分は諦めてて店員さんにはもう大丈夫ですと伝えて他の仕事に戻ってもらい、引き続き一人で丁寧に見ていく。什器の裏には詰め過ぎてもみちくちゃになった服の吹き溜まりができていたりするから油断できない。しばらくしてさっきの店員さんは、いかがですかとわざわざ声をかけに来てくれたりして優しい。と、突然それはすぐ側にパッと現れた。同じラックを何往復と見ているはずだったのに節穴だった。探しておきながら本当にあったことに半ば驚いてしまう。レジに行きながら店員さんに報告すると、大きく呼吸をして、良かったです〜!と胸の前で小さく拍手してくれていた。良かった、良い土産ができた。早く子に見せたい。

お腹も空いたし帰ってごはん食べないとなぁと思いつつ、高円寺の商店街に求人貼り紙はないかと見ながらのろのろ自転車を走らせていると、なんと元夫が女性と歩いている。やまちゃんの彼女だ。気づけばやまちゃん抜きで二人でいるところを度々見かけてきて、こんな事態の時にまでこれ、身体中がカーッとなるけど感情を殺して何してんのー、と後ろから声をかけると、元夫が一瞬たじろぎながらあえて堂々としてみせるようにハキハキと、あぁご飯食べてた!と言ってきて、あー、私も帰って食べようっと、とだけ言い残しながら走り去ったけど身体のなかは燃え続けていた。二人で歩いてる姿を目撃するのはショック過ぎた。福祉事務所の仕事探しお手伝いが必要な立場にやられた私が、朝出て行く時は寝ていた元夫が、しっかりお昼に女性と二人でご飯なんて食べに行っていて、仕事が見つからなかった私はお腹空いたと誰もいない家に帰ってひとり食べようとしていた。自分ばかりが惨めだと思えた。去る私を呼び止めもしてくれない。ママ友とあそこのパート良さそうだねなんて話していた蕎麦屋の前で店内の様子とパート募集の貼り紙をじっと見ながら、そろそろ歩きで辿り着くだろう二人が声をかけてくるかもしれないと思っていたのに、私を無視して通り過ぎて行く二人がガラスに映る。そうか。もう徹底してそういうつもりなのか。悔しい。急いで追いかけて後ろからと回り込んで前からと、二人並んで歩いている写真を撮って無言で走り去る。私ばかり見窄らしかった。お腹空いていたはずが食べる気がしなくて、無理矢理お菓子をひとつ食べてみるけど味すらしない。気持ちがおさまらなくて元夫に連絡をする。ちょっと話し合った方がいいんじゃない?今すぐ帰ってこれないの?と言うと、いいよ行くよ、と強気。今どこ?自転車は?と言うと、まだ全然帰る気配のない道を歩いているようだったし、自転車はやまちゃんと彼女の家のところのようで、なんでそんな距離わざわざ歩いているのか、二人の時間を楽しんでいるようにしか思えなくて、もう冷静にいられなかった。5分から10分くらいして帰ってくる。歩きで来たからと言い訳。さて話をしようじゃないかと、私はノートパソコンで書き上げてあった離婚協議書を開く。目の前に元夫が話す姿勢でやって来てようやく少し落ち着く。離婚の事実に疑いになりそうなことは意識して回避するのがあなたの務めではないのか、それは前から何度も言っていたのに、元夫は全然そんなつもりじゃないから気がつかなかったと、問題な行為であることに関しては理解したようだった。こないだまで抱えていた大きな仕事の一部をごっちゃんと考えて彼女に頼んだから、そのお礼にごはんを奢ったということらしい。やっぱり、数日前に関係を怪しんでしまうような電話をしていた相手は彼女だったのだろう。取り繕って誤魔化すという時点で、そんなつもりじゃないわけでなくむしろちゃんと意識しているんじゃないかとしか思えないし、打ち上げ的なものだよというけど、三人でやった仕事なのになぜ二人だけなのとも思った。といっても町ラーメンだよ?そんな大層なものじゃない、と呆れたように言われて私はとうとう涙が溢れた。「地元ごはんは結局特別美味しいわけじゃないし」と、私と行くのはチェーン店ばかりで、そんな肩の力の抜けた日々は嫌じゃなかったけど、他の人とは他には無い店に行くのかということはショックだったし、一緒にごはんに行くことすら私にはもう叶わないのに。私は子どもと二人きりで食事するしかないのに。子どもとすら一緒にごはんを食べないお父さんが他の誰かとは食事をする現実が辛い。いいよ、ごはん食べに行くよ行こうよ、と元夫が言ってくれて、なんだそういうことはできるのかと少し気が晴れた。

呼びつけた元夫を残してお迎えに出る。今日は帰っておやつにしてから図書館に行く。セブンでスイーツを買って、自転車で走りながら、お父さんと三人でごはん食べに行くならどこがいい?と聞いてみると子は、う〜ん、と考えてから私と二人でいい、と言った。子どもからしてみたらそんなもので、それでもなんとなくいるのがお父さんなのだろう。でもデニャーズ(デニーズのこと)でもサイゼリヤでも好きなところでいいよと言うと、それなら行く〜とのことだった。元夫はファミレスにいちいち不満そうにしていたことを子は感じていたのかもしれない。子どもを連れて入れる店を自らリサーチしたり、無理してでも行きたいところなら子が気にせず居れるように子をもてなせば良いんじゃないかなという気もするけど、そこまでは考えられていなくて、それは子どもと繋がっている母である私にしかできないことだとして、私が同じような感覚でそこに労力をかける人間だったら、というところにいつしかその不満が向けられたのもあるだろうなと思う。私だって食は楽しみたいけど、自分のライフスタイルや生活水準に見合った程度でいいというのもあるし、子どもらしさに合わせていられるのも今だけだと思うと尊い時間だとすら思えたりしてる。私はそれを強いることはなかったつもりだけど相容れないと思われていたなら、なるべくしてなった我が家の崩壊かもしれない。

買ったおやつを食べて図書館。図書館からのプラザ。プラザからの公園。親の年齢が近く飾らず話せるいつもの仲間親子で遊び続ける。10月からの各値上がりについて嘆き話が尽きない。そこに元夫から連絡。皆んなの輪から抜けて隅っこで話す。ここにしようと思う、と伝えられていた家から自転車で3分くらいの距離にある部屋で契約を決めると言いきった矢先の今日のこと。もうどこにもストレートにはぶつけられないし受け止めてももらえない怒りと悔しさで今日はかなり荒れたけど、このきっかけで一緒にごはんに行けるという話にもなって少し持ち直せたところもある。そうしてまた何度目かの冷静なメッセージをしてあったところだった。ちょうど前田敦子のインタビューをみたのも影響している。離婚したから前より仲良くなったという話で、別の場所を持つことで良い関係を築けるなら、待ったなしに成長していく子どものためになるんじゃないかと希望になった。元夫は「なんかさ、本当に離婚したんだね」と、今日の私の話し方で実感したと柔らかにしみじみとするから一気に込み上げてくる。外なんだからそんな泣くような話やめてよ、と言ったけど珍しく元夫は話し続けて涙が溢れた。薄暗くなってきていて良かった。鼻を拭くふりして目にタオルを当てる。向こうの方ではママ友二人に見守られながら子ども達が無邪気に目一杯遊んでいて、この安心があるから今ゆっくりと話ができるわけで、感謝しかないこの目の前の光景も合わさって涙はしばらく止まらなかった。50分くらい話していたみたいで、もうすぐ6時の鐘がなる。少しだけねと言いながら来た公園なのに二人のママに申し訳なかった。三人良い感じに楽しそうに遊べてたよ〜と言ってくれる。ようやく帰ろうの声をかけると、子ども達はまだ遊び足りないとばかりに薄暗いなかを駆け回った。皆んなと分かれて業務スーパーで牛乳を買ってから帰る。牛乳どこで買ってる?という話にひとりのママが金曜のユータカラヤが一番安いと言っていて、このメンバーは相変わらず頼もしいなと心がほっこりした。

夕飯の後に今日買った昆布飴を我慢ならずに食べてみたら銀の詰め物が取れてしまった。口のなかに舌を這わせてどこか確認するけど、矯正ワイヤーが行き交っていて口のなかの凹凸が多く全くどこなのかわからない。かかりつけの歯科は明日休みなことに気がついて慌てて電話。どこの歯ですかと聞かれ、自分のことなのに記憶喪失の人間のように分かりません…!としか答えられず恥ずかしかったけど予約は取れた。明後日にならば空きがあるとのことだけど、以降は調整が難しい。明後日は台風といわれていて、だから皆警戒して予約が空いているのだろうか。どれほどの天候なのか、とりあえずその日の午後で予約した。都民の日で休みの子のことは仕方ない。元夫も雨ならさすがに家を出ないだろう。

その元夫が、今日の電話で無事円満に離婚ができたんだと安心したかのようだったことを思い出して夜にはまた沸々と怒りが込み上げてきた。前田のあっちゃんだからあんな余裕があるわけで、一般市民の私に円満はないだろう。

 

 

 

9/30

子の戸籍を移動させるための家庭裁判所の手続きが途中になっている。書式をダウンロードしたり収入印紙だったり準備が必要そうだったので元夫に投げていた。実働は私がやるしかないと分かっているから。元夫は新居のあれこれもあるし今日のうちにやってしまいたいということで、もう一緒に霞ヶ関家庭裁判所まで行くことにした。裁判所という重い響きに一人で行くのは正直不安で気が重かった。無言で各々駅へ向かったけど電車は一緒に乗る。元夫の方も以前とは違う関係なことを意識しているのか目の前でスマホは触らないでいて、気遣いとはそういうことだよとあらためて思った。しばらくすればたまにスマホは見ていたけれど話しかければ即座に反応して見せてくる。思えば過去、元夫は隣りにいる私は無いことになっているように常にスマホを触っている人間だった。一緒にいる時間も長くなればそんなこともありきだとは思うけど、些細な行動も積み重なれば大きな壁になっていて、私は壁の向こう側の世界を妬んで僻んで口から出てくる言葉は嫌味ばかりになっていたと思う。お互い少しの想像と気遣いがなかったのは間違いない。いまは丁寧に相手を見なければとも思えるようになった。家庭裁判所の入り口は空港のように身につけているものカゴに出して金属反応ゲートを通る。その先は役所と同じ様子で、もうすぐ手続きになるのが分かって気が緩み、書類を書く手を止めてこれまでの自分達のことについて話し合いになっていった。今まで話し合いしなさすぎということもある。外で話すのはいくらか人の目を意識して罵倒口調にはならずに話せるという利点もあり。でもいい加減とりあえず書類提出するかと窓口に行くと、午後からの対応になるので1時に居てくださいと言われてしまう。なんということか。その待つ間にやれることがあるとすると下のコンビニで収入印紙を買える。こんな一見堅苦しい場所でも動いているのは人間。地下にはファミリーマートと職員向け食堂もあって、小バックを腕に下げた女性や片方の手をポケットに突っ込みながら歩く男性など、どこのオフィスビルとも変わりない光景だった。お茶と印紙を元夫に買ってもらい、引き続き話をする。元夫は、ちょっと一本仕事の電話してきていい?と言いながら席を立ったりで、思ったよりも時間は潰れて約束の時間。この窓口に来ている人は数人いて、ここで他になんの手続きがあるのか分からないけど、赤ちゃんを前抱っこした女性が一人いたりもして、特別悲壮感があるわけでもないけど、やっぱり何か訳ありなのかなと思ったりする。担当についてくれたのは年配の女性で、隣りに元夫がいても真っ直ぐ私だけを見て戸籍移動の申し立てを進めた。途中郵便切手を買いに元夫に動いてもらったけど、これは私だけの問題なんだなとはっきり思った。今日の判決を待つとしたら二時間とかかかる。後日郵送ということにした。すでにお迎え時間ぎりぎり。なんの話をしたからだったか忘れたが、駅でまた涙が込み上げた。夫を失うことをこれだけ辛く思うのは子どもを囲んでやってきた日々があるからで、これから父親の姿が見えなくなる生活というのが子どもにどう影響するかとか、とにかく不安と焦りでいっぱいなのだけど、それと同じだけパートナーという存在は自分の支えでもあったんだなとあらためて気がついたから悔しいというのもある。共に暮らすことで一人だけでは見えない世界を無意識にでもたくさん共有してもらえていた。元夫と話さなくなっただけで世界がぐっと狭まった気がしている。涙を拭いて電車に乗って、ポツリポツリと子どもの近況などを報告する。仕事の買い出しがあると言って元夫は途中で降りていった。お迎えのあと軽く公園、帰ってお団子のおやつ。仲良しママへお知らせしながらいつもより早い時間にプラザへ行くと、イベントをやるから参加してみてと先生に誘われる。いつも折り紙を教えてくれる先生がヘッドマイクを付けて何やら本格的だと思ったら教育番組さながらの歌声。あとで聞くと先生は昔歌のお姉さんをしていたとか。地方のテレビやデパートの屋上営業など、バブル期だったから散々良い思いさせてもらいましたと話す。そんな華やかな世界を見てきた人がその後の人生をこういうところで凌いでいるんだなぁと遠い目になる。そんな先生やママ友に見せたいと、子が手作りした絵本を持ってきていて、今回の絵本はしかけ絵本仕様になっていて、これまで読んできた数々の絵本から得た知識の集大成ともいえる出来栄え。ママ友は感嘆の声をあげて褒めちぎって、本当にどんな大人になるのか楽しみだよと言ってくれる。その裏で私はこんな期待に添えるような成長を一人で支えられるのかなぁと弱気になったりもする。プラザのあとは前の家の近くのパスタ屋まで行ってホットペッパーの今日までの期間限定ポイントを使ってお弁当を200円で手に入れた。買ったはいいけど子は鯖のトマト煮のお弁当は食べたくないというので私達は作ったものを食べ、今日は霞ヶ関までご苦労さまということで元夫への土産にした。この一ヶ月ちょっと、完全に食事は分けられていて、私が炊いたお米だけは暗黙の了解で共有されていたけど、豆腐や納豆パックすらも手をつけずにわざわざ新たなものを買われていた。こちらも、持ち帰りで割れてしまったのであろう卵だけは手をつけたけど、基本相手が買ってきたバリエーションのない食材は見て見ぬふりをした。彼はひとり飯らしく調理は茹で卵と肉をタレで焼くことしかしないようだった。私達が以前はどう食事をしていたかなんてもう思い出せない。帰ると冷蔵庫にどこかでみたことあるような手作りたまごポテトサラダのお裾分け。元夫に連絡すると、前のマンションの周りで最終日の管理人さんに会って話していたら住人だったフラメンコの先生が通ってカバンから出してきてくれたんだとのこと。懐かしい。住んでる時何度かそうして頂いていた。管理人の吉田さんももう隠居にはいるからなのかテンション高かったとのことで、亡くなった父も同じ歳だというと、おぉ息子よと言って肩を組んできたらしい。元夫もどこか興奮気味で、パスタ屋のお弁当あるよと言うと、私達も夕飯の時に帰ってきて、いいの?と言いながら珍しくこちらの用意したものを、と言ってもテイクアウトのお弁当だけど、それを同じ場所で食べた。離婚の話をはじめた頃は、買ってきたものですら険しい顔して拒否してきていたのに。

前に我が家のことを打ち明けた友人が、自分も今日社会福祉事務所に相談に行ってきたとのことで、それ聞いたそれ話したとか言い合いながら、ひとり親になると与えられる権利のことで盛り上がる。医療費が無料になること、水道料金の減免、粗大ゴミ料金も免除される。年に一度のリフレッシュと称されて、ディズニーランドやピューロランドなど指定された施設に遊びに行くのは一人1500円の補助を受けられる件についてやり取りしていて、なんだか楽しくなってきた。お互い担当してくれた区の窓口の人も、この件は楽しそうに話してくれていたというのがまた面白かった。やっぱり一番人気はディズニーですね〜とか言って、でも値上がりするからどっちみち高いんですけどね〜と、これが今回発売分の価格表ですとか、向こうの人も明らかに前のめりになっていて、悲壮感なくて良かったよね〜と友人とワクワク連絡を取り合った。同時期に初潮を迎えた仲間ってくらい心強い。